しいきさいこ「きいろいカラス」
Book, Flyer








しいきさいこ「きいろいカラス」
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美術家・イラストレーターの椎木彩子さんが、世田谷区・千歳烏山(ちとせからすやま)の地名から着想を得て創作した、現代民話の絵本。そのデザインを担当しました。 作品は構想から2年、コロナ禍において改めて日常を見つめるなかで、外出が叶わない人々による手紙の交流を描いたものです。絵本は世田谷区の生活工房ギャラリーにて開催された椎木さんの個展に向けた作品の一部であり、それにあわせて自主的に制作されたものです。 デザインは完成画を揃えての段階ではなく、ラフの段階から絵の構成とあわせて一緒につくっていきました。文章そのものや文章が入る位置、絵の構図、紙の質感、本のサイズなど、対面で直接話して検証しながら、時に雑談を交えながら、二人三脚でかたちにしていきました。制作を通じて軸となった考え方は、「今の話も、いずれは昔話になる」という視点。そして、奇抜なデザインで目立たせるのではなく、「昔からそこにあったような、王道の絵本の佇まいを目指す」ことでした。 絵の魅力を引き立てるために重要となる印刷は、長野県の印刷会社・藤原印刷さんに相談。コーディネーターの小池さんと色の方向性をじっくり話し合いながら進めていきました。原画の再現性にこだわるのではなく、物語の世界観を大切にする方向で、美しく印刷していただきました。 デザインは物語に寄り添い、読み手が自然と絵の世界に入り込めるような、「縁の下の力持ち」としての役割を果たせるよう心がけました。 完成した絵本は、椎木さんの尽力により全国のさまざまな書店に並び、世田谷区の図書館にも所蔵されているそうです。 ――いまから50年後、100年後のこどもたちが、この『きいろいカラス』を昔話として手に取ってくれる未来を想像しながら。